文学少女 と慟哭の巡礼者(日文版)

作者:野村美月  
分类:日文原版
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目次

プロローグ 自己紹介代わりの回想――ぼくがなりたかったもの
一章 ぼくらは、おずおずと
二章 井上ミウが死んだ理由《わけ》
三章 それは、聖《きよ》らかな罠
四章 星を巡る地図
五章 敗れた少年
六章 誰が、小鳥を殺したの?
七章 闇夜の旅路
八章 慟哭
九章 きみが空を見ていたころ
エピローグ 終わりのはじまり


[#地から2字上げ]イラスト/竹岡美穂





[#ここから太字]
 今日も電話が、かかってきた。
 メス猫の交尾《こうび》みたいなヒステリックなベルの音が聞こえると、皮膚《ひふ》が一瞬で粟立《あわだ》ち、体が細かく震《ふる》え、胃を熱い爪《つめ》で引っ掻《か》かれるような痛みと不快感に、発狂しそうになる。
 電話がなければ、世界はどんなに安らかだろう。
 電話はいつも、醜《みにく》い言葉、汚い言葉、呪《のろ》われた言葉しか吐《は》き出さない。
 粘《ねば》り着くような、恨《うら》めしげな、無遠慮《ぶえんりょ》な、卑小《ひしょう》な、腐臭漂《ふしゅうただよ》うあの声が、美しくあるべき世界を、ゴミで一杯にしてゆく。

 電話のベルを、しつこく鳴らすやつら、みんな死ねばいい!
[#ここまで太字]




 プロローグ ● 自己紹介代わりの回想――ぼくがなりたかったもの



 ほんとうのさいわいは一体何だろう。
 宇宙の片隅《かたすみ》で、そんなことを考えた男の子がいた。
 ぼくの幸いは、美羽《みう》だった。
 あの頃、美羽が隣《となり》にいるだけで胸がはずみ、美羽が朗《ほが》らかな澄《す》んだ声で物語を紡《つむ》ぐとき、ぼくらを取り巻くあらゆるものが虹色にきらめいた。
「あたし、作家になるんだ。あたしの本をたくさんの人に読んでもらうの。そうしてその人たちが、幸せな気持ちになったらいいなぁ」
 あたたかな木漏《こも》れ日《び》の下で、ポニーテールをさらさら揺らしながら、美羽は明るい目をして未来の夢を語った。
「コノハにだけ教えてあげたのよ。コノハは特別だから」
 綺麗《きれい》な声でささやいて、首を小鳥のように傾け、いたずらっぽい目をしてじっとぼくを見つめたのだ。
「コノハの夢はなに? 大きくなったら、コノハはどんな人になりたい?」
 キスをしそうな距離まで美羽の顔が寄ってきたので、ぼくはひどく汗をかいてしまい、どっちを向いていいのかわからなくなってしまった。
 脳味噌《のうみそ》を両手でぎゅっと絞《しぼ》り上げられるほど真剣に考えて、ちゃんと答えなきゃと必死になって、頬《ほお》を熱くして、やっとのことで、
「ぼくは……木になりたい」
 と答えたら、大笑いされた。

 あれから三年が過ぎた。
 ぼくの聖地は喪《うしな》われ、美羽は姿を隠した。ぼくは暗い引きこもり生活のあと、平凡《へいぼん》な高校生になった。
 高二も終わりに近づいた今、ぼくはまだ木にはなれず、幸いの意味もわからないまま、夕暮れの、やわらかな金色に染まる文芸部で、〝文学少女?の、おやつの作文を書いている。
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专辑“文学少女”
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